Googleスパムアップデートで問われるのは何か——記事の「量」と「存在理由」の境界線
8月19日Googleは「August 2026 spam update」の展開を始めた。
全地域、全言語が対象。完了までには数日かかる見込みだという。少なくとも発表時点で、新しいスパムポリシーが追加されたという説明はない。今回、何を重点的に検出するのかについても明らかにされていない。
AIで作った記事が落ちるのではないか。 アフィリエイト記事が狙われるのではないか。 外部の制作会社に作らせた記事は危ないのではないか。
気持ちは分かる。けれど、今回のアップデートは今年に入って三度目になる。3月、6月に続いて三回目だ。
その間の5月15日には、Googleがスパムポリシーの適用範囲について一つの重要な明確化を行っている。適用先は、通常の検索結果だけではない。AI OverviewsやAI Modeを含む、Google検索の生成AIによる回答にもスパムポリシーは適用される。
だとすれば、「アップデートが来た。今回は何を直せばいいのか」と毎回答えを探すこと自体、少し的が外れている。スパム対策は、アップデートが来てから始めるものではない。
スパムアップデートは、突然ルールが変わるイベントではない
まず、スパムアップデートとは何かを整理しておきたい。
Googleは、検索スパムを検出する自動システムを常時稼働させている。AIベースのスパム防止システムであるSpamBrainも、その一つだ。Googleは、こうした自動システムに大きな改善を加えたとき、それを「spam update」と呼んで公表している。つまり、アップデートの日だけ突然Googleがスパムを探し始めるわけではない。
常時稼働しているスパム検出システムに大きな改善が加えられ、それが順次反映されていく。それがspam updateだ。この違いは、思っているより重要だ。
アップデートのたびに新しいSEOテクニックを探すのではなく、自分たちのサイトが平時からGoogleのスパムポリシーに照らしてどう見えるのかを確認しておく必要がある。
「AIで書いたからスパム」は少し違う
いまWebメディアが特に注意したいものの一つが「scaled content abuse」、Google日本語版でいう「大量生成されたコンテンツの不正使用」だ。Googleが問題にしているのは、ユーザーを助けることより検索順位を操作することを主な目的として、多数のページを生成する行為だ。
その例として、生成AIを使って大量のページを作りながら、ユーザーにほとんど価値を加えていないケースも挙げられている。ここだけを読むと、「Googleは生成AIで書いた記事を禁止している」と受け取ってしまいそうになる。
違う。問われているのは、AIを使ったかどうかではない。何のために大量のページを作り、そのページにどれだけの価値を加えたのか、だ。
生成AIで100本作ったから違反になるわけではない。100人がかりで100本書いたから安全になるわけでもない。
他社の記事を集め、少し表現を変え、検索キーワードに合わせて量産する。書き手が人間であろうとAIであろうと、そこに独自の価値がなければ本質は変わらない。
以前、私は「他社の記事をまとめ直しただけのコンテンツは、どこまで増やしても代替可能だ」と書いた。スパムポリシーを何度読んでも、結局この一文に戻ってくる。
生成AIが生んだのは、まったく新しい問題というより、以前からあった「記事数を増やせば流入も増える」という発想を、これまでとは比較にならない規模で実行できる環境だ。そのことのほうが、メディアにとってはずっと大きな変化だと思う。
記事数が多いこと自体は問題ではない
ここは誤解されやすい。
「大量生成が問題になるなら、数万本、数十万本の記事を抱える大手メディアは危ういのか」
もちろん違う。
ニュースメディアなら、一日に何十本、何百本と記事を公開することもある。データベース型のサイトなら、ページ数はさらに膨らむ。問題は数ではない。そのページが存在する理由だ。
独自取材がある。専門家の見解がある。実際に使った検証がある。調査したデータがある。同じテーマを扱っていても、別の条件、別の対象について必要な情報を提供している。そうした理由があってページが増えることと、「このキーワードでも流入が取れそうだから」という理由だけで似たページを増やすことは、同じ大量コンテンツでも中身がまったく違う。
記事数をKPIに置いているメディアには、共通して見られる兆候がある。「今月100本」という目標が先に立ち、公開日から逆算してテーマを探している。
テーマが先か、本数が先か。この順番が逆転している媒体ほど、記事の輪郭が少しずつ似てくる。
扱うキーワードは違っても、構成が同じになる。調べる情報源も似る。読後に残るものも変わらない。やがて、「この記事でなければならない理由」が消える。
記事数をKPIに置くことそのものが悪いわけではない。ただ、その数字を達成することが編集の目的になった瞬間から、危うさは始まる。
「サイト評判の不正使用」もメディアの盲点になりやすい
もう一つ無視できないのが「site reputation abuse」、サイトの評判の不正使用だ。Googleが問題としているのは、第三者が作ったコンテンツを、既存サイトが持っているランキングシグナルを利用することを主な目的として掲載し、本来得られる以上の順位を獲得しようとする行為だ。
たとえば、普段その媒体が扱っているテーマとはほとんど関係のないコンテンツをサイト内に置き、そのドメインが長年積み上げてきた評価を利用して検索順位を取ろうとするケースが分かりやすい。ただし、ここでも「第三者が書いた記事だから違反」という理解は正しくない。
Google自身、通常の寄稿記事や意見記事、編集記事、読者への情報提供を目的とした記事広告やネイティブ広告などを、一律にサイトの評判の不正使用とはしていない。重要なのは、誰が書いたかだけではない。なぜ、そのメディアがその記事を掲載しているのか。
この問いに、編集側が自分の言葉で答えられるかどうかだ。少なくとも「サイトの評判の不正使用」という観点では、外部ライターの記事も、制作会社が作った記事も、タイアップ記事も、存在すること自体が問題なのではない。
自社媒体との関係性が薄く、読者に届けたい理由もなく、「このドメインなら順位が取れるから」という理由だけで掲載しているなら、話は変わる。これはSEO担当者だけで判断できる問題ではない。編集方針と事業判断の両方にまたがる話だ。
順位が落ちても、スパム認定されたとは限らない
アップデートが始まると、Search ConsoleやGA4を何度も開きたくなる。昨日よりクリックが減った。順位が下がった。PVが落ちた。これはアップデートの影響ではないか。
ここでも急がないほうがいい。検索流入は、さまざまな理由で変化する。アルゴリズムの変化もあれば、クロールやインデックスの技術的な問題もある。検索需要そのものが減ることもある。季節性やサイト移転が原因になることもある。
Googleも、流入が落ちた場合はSearch Consoleでページ、クエリ、国、デバイス、検索タイプなどを分けて確認し、原因を切り分けるよう案内している。スパムを疑うなら、Search ConsoleのManual Actions、つまり手動による対策も確認しておく。ただし、ここに何も表示されていないからといって、自動システムによる評価の影響がないとは限らない。
spam updateは、そもそも自動システムの改善だ。
「アップデートが始まってから数字が落ちた。だからスパムアップデートだ」
そう決めつけて、翌日に数百本の記事を削除するような対応は危うい。特に今回のように、Googleが具体的な対象を説明しておらず、アップデート自体も展開中である段階ならなおさらだ。
まず、何が落ちたのかを見る。サイト全体なのか。特定のディレクトリなのか。特定のテーマなのか。特定のタイプの記事なのか。順位が落ちたのか。表示回数が減ったのか。表示回数は変わらず、クリック率だけが落ちたのか。数字を分解すれば、見える景色はかなり変わる。
問われているのは記事ではなく、記事を作る仕組みかもしれない
スパムポリシーを読んでいると、一本一本の記事を直しても解決しない問題が多いことに気づく。大量の記事を検索順位獲得のために作っているなら、問題は一本の文章ではなく企画の立て方にある。
他社の記事を集めて少し加工しているなら、問題はライターの筆力ではなく制作工程にある。媒体と無関係な第三者コンテンツをドメインの力で押し上げようとしているなら、問題はSEOではなく事業判断にある。だから、既存記事をリライトするだけでは足りないことがある。
なぜその記事を作るのか。誰のために作るのか。その記事に、自社だから出せる情報は何があるのか。公開の可否を、誰が何を基準に判断しているのか。ここまで戻らなければならない。
Googleは、スパムポリシーに違反していたサイトが修正を行っても、自動システムがその変更を認識し、サイトがスパムポリシーに準拠していると判断するまで、数か月かかる場合があるとしている。アップデートが来てから慌てて直し、翌月には元に戻る。そういう性質のものではない。
「アップデート対策」という発想そのものをやめる
Googleのアップデート情報を追う必要がないとは思わない。何が変わったのかを知ることは重要だし、大きな順位変動が起きれば原因を分析する必要もある。ただ、「アップデートが来た。今回は何をすればいいのか」という発想からは、そろそろ離れたほうがいい。Googleのスパム検出システムは、アップデート期間だけ動いているわけではない。
そして今年5月、Googleはスパムポリシーが通常の検索結果だけでなく、Google検索の生成AIによる回答にも適用されることを明確にした。SEOとAIOを別々の問題として考えることも、だんだん難しくなっている。検索エンジン向けに大量の記事を作る。AIに引用されるために大量の記事を作る。目的の言葉が変わっただけで、やっていることが同じなら意味はない。
前回まで、AIOの土台としてサイト構造を見ること、そして他社にはない一次情報を持つことについて書いた。スパムアップデートについて考えても、結論はそれほど遠くない。誰かがすでに書いた情報を、検索流入を増やすためだけに大量に作るのではなく、自分たちが持っている情報を、必要としている人に、理解できる形で届ける。かなり当たり前の話だ。
けれど、記事を作るコストが急激に下がった今、その当たり前を守れるかどうかは、以前より重要になっている。スパムアップデートが怖いのなら、アップデートの日付を見るより先に、自社の記事がなぜ存在しているのかを確認したほうがいい。そこに答えがない記事が大量にあるなら、問題は今回のアップデートではない。もっと前から始まっている。
そして、その答えを自社だけで確認するのが難しいと感じたときは、一度外部の目を入れてみるのも一つの手だ。
