検索順位が上がっても、問い合わせが増えないサイトは何が足りないのか——SEOと「指名検索」の話
2025年11月に発表されたGoogle Search Consoleの「ブランドクエリ」フィルタが、2026年3月、すべての対象サイトで利用できるようになった。ブランド名、その表記違い、関連する商品名やサービス名などを含む検索と、それ以外の検索を分けて見ることができる機能だ。
いわゆる「指名検索」と「非指名検索」に近い。この機能を見たとき、少し面白いと思った。
SEOの仕事では、新しいユーザーをどう検索から連れてくるかを考えることが多い。「ピラティス 渋谷」「相続 税理士」「法人 SEO対策」のように、まだ会社名を知らない人が検索するキーワードで上位を取る。もちろん重要だ。その人はサイトを見たあと、会社の名前を覚えているだろうか。次に何かを調べるとき、もう一度一般的なキーワードで検索するのか。それとも、会社名やサービス名を検索するのか。ここには、検索順位とは別の問題がある。
SEOでは「知らない人を連れてくる数字」が目立ちやすい
SEOの成果として、もっとも説明しやすいのは検索順位だ。
10位だったキーワードが3位になった。自然検索流入が30%増えた。月間PVが10万増えた。
数字として分かりやすい。順位や流入を確認するのは、SEOの仕事として当然のことだ。そうやって数字を追っていると、少し妙な状態に出くわすことがある。
検索流入は伸びている。記事も読まれている。けれど、問い合わせは増えない。もっと極端なサイトでは、毎月かなりのユーザーを検索から集めているのに、その会社の名前がほとんど知られていない。検索結果には何度も出てくる。記事も読まれている。しかし、読者の中には何も残っていない。
SEOとして失敗しているとは言えない。検索流入を増やすという目的なら成功している。事業として見たときに十分かどうかは、また別の話になる。
非指名検索と指名検索では役割が違う
Googleはブランドクエリについて、そのブランドをすでに知っている人からの検索と、そうでない人からの検索を分けて分析することで、トラフィックの傾向を理解しやすくなるとしている。考えてみれば当然だ。「ヴィヴァルディ・インク」と検索してこのサイトに来る人と、「AIO SEO 違い」と検索して初めてこの会社を知る人では、検索する時点での関係が違う。
非指名検索は、新しい接点になりやすい。指名検索は、すでに何らかの形で名前を知った人が、もう一度その企業やサービスを探している。どちらか一方だけ多ければいいという話ではない。非指名検索がほとんどなければ、新しいユーザーとの接点が増えにくい。一方で、非指名検索ばかりで指名検索がまったく増えないのであれば、検索で獲得したユーザーが、そのサイトや会社を認識しないまま離れている可能性もある。
この二つを分けて見ることには、かなり意味があると思っている。ただし、Googleもブランド/非ブランドの分類には誤りが生じる場合があるとしている。数字をそのまま鵜呑みにするというより、大きな傾向を見るための材料として扱ったほうがいい。
もう一点、注意しておきたいことがある。
指名検索そのものを増やせば、Googleから評価されて順位が上がる、という話ではない。Googleは、ブランドクエリフィルタは分析のための機能であり、Google検索のランキングの仕組みには影響しないと明記している。指名検索は、SEOの裏技ではない。見るべきなのは、その数字の向こう側だ。
検索で「答え」だけ渡して終わっていないか
検索流入の多い記事を読んでいると、ときどき不思議に思うことがある。内容は正しい。検索した質問にもきちんと答えている。SEOの記事として大きな問題もない。でも、最後まで読んでも「誰が書いたのか」がほとんど残らない。
会社名を別の会社に置き換えても成立する。競合サイトが明日まったく同じ内容の記事を公開しても、それほど違和感がない。以前、このコラムで一次情報について書いたとき、「その記事の自社名を競合他社の名前に置き換えても、そのまま成立してしまうか」という話をした。
同じ問題がブランドにもある。
検索した人が必要としている答えだけを効率よく渡す。それ自体は悪くない。むしろ検索記事としては正しい。それだけを何百本積み上げても、「この会社の記事をまた読みたい」という理由は生まれにくい。検索される記事は増える。でも会社そのものは覚えられない。この二つは同時に起こるのだ。
一次情報はSEOだけのためにあるわけではない
だから、一次情報の意味も、検索順位やAIからの引用だけで考えないほうがいい。自社で実際に行った施策とその結果、失敗した条件、現場で迷った判断、他社とは違う意見……こうしたものが記事に入ると、その情報は少しずつ発信元と結びついていく。「SEOについて書かれた記事」ではなく、「この会社がSEOの現場でこう判断した記事」になる。この差は小さく見えるが、積み重なるとかなり大きい。
2026年5月にGoogleが公開した生成AI検索向けの新しいリソースでも、既存情報をまとめ直しただけではない、独自の視点や経験を含むコンテンツの重要性が改めて示されている。生成AIが一般的な説明を簡単に作れるようになった以上、誰が書いても同じ情報の価値は相対的に下がっていく。これはAIOだけの話ではない。企業が名前を覚えてもらうという意味でも、根本は同じなのだ。
指名検索が増えれば成功、でもない
では、指名検索をKPIにすればいいのか。ここもそんなに単純ではない。
会社名の検索が増える理由はいくらでもある。テレビで紹介されたのかもしれない。広告を大量に出したのかもしれない。SNSで話題になった可能性もある。営業活動や展示会、口コミの影響かもしれない。既存顧客がログインページを探すために、毎回Googleで会社名を検索しているだけということもある。
検索数が増えたという数字だけを見て、「SEOでブランド力が上がった」と結論づけるのは危ない。数字が示していることと、そこから推測していることは分けたほうがいい。
これは順位変動を見るときと同じだ。指名検索が増えた……そこまでは事実だ。なぜ増えたのかは、別のデータを見る必要がある。とはいえ、まったく手がかりがないわけではない。
新しい記事を公開した時期と指名検索の増加時期が近いか。指名検索だけでなく、直接流入やサービスページの閲覧、問い合わせに変化が出ているか。広告出稿やテレビ露出、SNSでの話題化など、他の要因が同時期に動いていないか。こうした周辺データを突き合わせれば、完全な証明はできなくても、何が影響した可能性が高いのかはある程度絞り込める。
AI検索が増えると、流入経路はさらに分かりにくくなる
AI検索が広がると、この問題はさらに複雑になる。
たとえば、ある人が生成AIに質問したとする。回答の中に会社名が出てきた。その場ではリンクをクリックしなかった。数時間後、その会社についてGoogleで検索した。Search Consoleだけを見れば、これはブランド名で検索してきたユーザーだ。しかし、最初の接点は生成AIだった。反対に、以前検索から記事を読んだ人が会社名を覚えていて後日ChatGPTでその企業について尋ねることもあるだろう。検索、AI、SNS、広告、直接流入など、ユーザーは、こちらが想定しているほどきれいに一つの経路だけを通ってこない。
Googleも2026年6月から、AI OverviewsやAI Modeなど生成AI機能における検索パフォーマンスを確認するための専用レポートを、一部のサイト向けに提供し始めている。それでも、AIで会社を知った人が後日ブランド名で検索した、といった一連の行動まで直接追えるわけではない。だから、AIOの成果をAIからの引用回数だけで測るのも、SEOの成果を検索順位だけで測るのも、同じような危うさがある。
重要なのは、最終的にその企業が認識されたのか、だ。
「流入を取ったあと」を見る
SEOの施策では、「どうやって検索結果に出すか」に多くの時間を使う。キーワードを調べたり、競合を分析したり、記事を作ったり、これらは全て必要だ。
だけど、検索結果からユーザーを一人連れてきた時点で仕事が終わるわけではない。
その人が記事を読み、別の記事へ移動したのか。会社について調べたのか。サービスページまで見たのか。数日後にもう一度戻ってきたのか。会社名で検索したのか。問い合わせをしたのか。ここまで見なければ、本当に事業につながったのかは分からない。
SEOは検索結果の中だけで完結するものではない。検索結果は、企業とユーザーが初めて接触する場所の一つにすぎない。
「検索される会社」になる
検索順位を上げることと、会社を覚えてもらうことは同じではない。PVを増やすことと、問い合わせを増やすことも同じではない。そして、指名検索を増やすこと自体がSEOの目的でもない。
非指名検索で初めて会社を知った人が、その後に名前で探すようになるのだとしたら、そこには検索流入とは少し違う価値が生まれている。ただし、その因果は数字だけでは証明しきれない。長くサイトを運営するなら、この差は無視できないと思っている。
私たちもSEOの支援では、順位やSearch Consoleの数字を見る。だが判断材料はそれだけではない。
どのページが新しいユーザーとの接点になっているのか。そのあと、どこへ移動しているのか。指名検索はどう動いているのか。問い合わせにつながっているのか。コンテンツの中に、その会社でなければ出せない情報があるのか。
SEO・AIO・コンテンツ・ブランドなど、名前を分けることはできる。ただ、ユーザーから見ればすべて同じ会社との接点である。
検索順位が上がっているのに成果を感じられないのであれば、次に見るべきなのは、さらに上の順位ではないかもしれない。検索から来た人に何が残っているのか。一度そこを見たほうがいい。
ヴィヴァルディ・インクでは、検索順位や流入数だけでなく、Search Console、サイト構造、コンテンツ、内部導線、指名検索、問い合わせまで含めてSEO・AIOの状況を確認している。アクセスはあるのに問い合わせにつながらない。記事を増やしているのに会社やサービスの認知が積み上がらない。SEOの数字は悪くないのに、事業成果とのつながりが見えない。こうした場合、問題が検索順位にあるとは限らない。自社サイトのSEO・AIOとコンテンツの現状を一度整理したい場合は、ヴィヴァルディ・インクにご相談いただきたい。
参考:
Google Search Central「Search Console にブランドクエリ フィルタを導入」
Google Search Central「Google 検索の生成 AI 向けに最適化するための新しいリソース」
Google Search Central「Search Console に検索の生成 AI のパフォーマンス レポートを導入」
