検索順位を長く見てきて、信じなくなったもの
SEOの仕事を長くやっていると、信じなくなるものが増えていく。これをやれば順位が上がるという話も、そのひとつだ。
タイトルを変える、記事を増やす、内部リンクを張る、そして構造化データを入れる……どれも決して間違った施策ではない。実際、それだけで順位が動くこともある。だから厄介なのだと思う。ひとつのサイトでうまくいった方法が、別のサイトでも通用するとは限らない。それでも結果が出た施策には、つい普遍的な意味を持たせたくなる。
僕も昔は今よりずっと検索順位を見ていた。コロナ前、まだ在宅ワークが特殊なことだった頃の話だ。順位が上がれば成功。下がれば、何かが間違っている。順位を確認するためだけに、朝一番にツールを開く。数字が一つ動いただけで、その日の気分が決まる。そんな時期があった。
もちろん今も順位やPVは見ている。見なくなったわけではない。担当している以上、見ないという選択肢はない。変わったのは、その数字だけで成功か失敗かを判断しなくなったことだ。
「これをやれば上がる」を信じなくなった
SEOには、いつの時代にも正解らしいものがある。文字数はこれくらい必要だ、記事は毎月何本出したほうがいい、タイトルにはこの言葉を入れるべき、そして内部リンクを増すなどだ。最近なら、E-E-A-TやAIO/GEOという言葉もよく使われる。当然それぞれに意味はある。それをやれば必ず成果が出るわけではない、というだけだ。
検索順位が上がらない理由はサイトによって違う。コンテンツが足りないこともあるし、サイト構造がおかしいこともある。競合が強すぎることもあれば、そもそも狙っている検索キーワードが事業と噛み合っていないこともある。記事の問題だと思っていたら、実際にはインデックスや内部リンクの問題だった、ということも珍しくない。
だから最近は、施策から考えることが少なくなった。先にサイトを見て、そのあとで何をするかを決める。順番としては、それだけのことだ。
「記事数」を目標にしなくなった
これは誤解されやすい。記事数が重要ではない、という意味ではない。コンテンツの絶対量が不足しているメディアには、今でも記事を増やす提案をする。検索需要があるのに、それを受け止める記事がないのであれば、作ったほうがいい。専門領域に必要なテーマが抜け落ちているのであれば、それも埋めたほうがいい。問題なのは、記事数そのものが目的になることだ。
月に30本出す、まず1000記事を目指す、そうした目標を先に置いてしまうと、なぜその記事を書くのかが後回しになりやすい。100本しか記事がないことが問題なのではない。必要な記事が、必要なだけ存在していないことが問題なのだ。
逆に、何千本もの記事を抱えていても、検索意図の似た記事が大量に並び、ほとんど読まれていないのであれば、多さが強みになるとは限らない。記事が足りないなら増やし、多すぎるなら整理する。一見すると逆のことをしているようだが、考えていることは同じだ。そのサイトに必要なページは何なのか、それだけを考える。
検索順位だけでは、成功かどうか分からない
検索順位は今でも見る。SEOやCV改善の仕事をしている以上、見ないわけにはいかない。ただ、以前ほどそれを絶対的な数字として扱わなくなっただけだ。
ある記事が検索1位になった、アクセスも大きく増えた、この結果は検索順位と流入だけを見れば、成功と言っていいだろう。でも、そのアクセスから問い合わせが一件も発生せず、他の記事も読まれず、会社名すら覚えてもらえていない。そういうケースを何度も見てきたのも事実だ。それを事業として成功と呼べるのかは別の話になる。
逆のケースもある。
検索順位は5位。アクセス数もそれほど多くない。それでも、その記事を読んだ人から継続的に問い合わせが来る。会社にとって価値があるのは、おそらく後者だ。
Webメディアなら、また少し話が変わる。PVそのものが収益につながる場合もあるし、回遊率や広告単価、Discoverからの流入なども見る必要がある。
結局、サイトによって見る数字は違う。SEOの目的が順位なら、それだけを追えばいい。実際には、SEOをする理由はその先にある。
Googleを攻略しようとしなくなった
Googleに評価されるには、どうすればいいですか、とSEOの相談を受けるとよく質問される。僕自身も、昔は似たようなことを考えていた。
最近はGoogleに評価されるものを作るという発想から始めることに、少し違和感がある。Googleを見すぎると、サイトの向こう側にいる人間が見えなくなるからだ。
検索ボリュームがあるから記事を書く、競合がやっているから同じテーマを書く、そしてSEOツールに不足していると表示されたキーワードを入れるなど、これらら繰り返していけば、SEO施策のチェックリストだけはきれいに埋まっていくかもしれない。その一方で、その会社がなぜその情報を出しているのかは、だんだん分からなくなる。
Googleを無視すればいい、という話ではない。Googleがどうサイトを理解しているのかは、当然考える。Googleを攻略することと、いいサイトを作ることは、同じではない。そこを混同すると、おかしくなる。
最後に残ったのは、サイトを見ることだった
ここ数年、特にAIが台頭してきてからSEOを単独の技術として考えることが少なくなった。
その会社は何をしているのか。誰に読んでもらいたいのか。それを聞かないまま画面に向かうと、たいてい話が噛み合わなくなる。どの記事が読まれていて、読んだ人が次にどこへ行き、そこからどう収益が生まれているのかは、常に見ている。編集や運用の体制がその状態を維持できる作りになっているかどうか、技術面に見落としがないかどうかも含めて、ようやくSEOの話をする。
最近は、PVの相談を受けても、最初からSEOの話をしないことが増えた。サイトを見て数字を見る、記事を読む、事業の話を聞く。その結果、「SEOより先に直したほうがいい」と伝えることもある。
検索順位を長く見てきたからこそ、検索順位だけでは分からないことが増えた。たぶん、それがこの仕事を続けてきて得た、一番大きな変化なのだと思う。
ヴィヴァルディ・インクでは、SEOやAIOだけを切り離して考えるのではなく、サイト設計、コンテンツ、制作、運用まで含めてWebサイトを見るようにしている。
順位が上がらない、記事を出しているのに成果につながらない、など原因がまだ分からない段階でも構わない。その場合は、施策を決める前に、まずサイトを見るところから始める。ご相談やお問い合わせは、ヴィヴァルディ・インクまでお気軽にどうぞ。
