Gargoyle KIBAさんの対談連載で聞き手をしている理由
2023年12月、日刊サイゾーにKIBAさんのインタビューが載った。見出しは「“ライブハウスの帝王”が語る自身のバンドと音楽の世界」。そこから、いろいろなミュージシャンを迎える対談の形になった。
媒体がサイゾーオンラインに移ってからも、連載は続いている。2026年10月時点で、記事は19本。対談相手は11組になった。聞き手は私だ。
人選はKIBAさん、構成は私
対談相手は、毎回KIBAさんが候補を挙げてくれる。日刊サイゾー時代から始まり、初回の最鋭輝さんや、TUSKさん(THE SLUT BANKS、ex-ZI:KILL、ex-CRAZE)、良夢さん(Monochrome Cinderella)、サイゾーオンラインに移ってから、tatsuoさん、でんでけあゆみさん(バックドロップシンデレラ)、CUTTさん(shame)。RYOさん(test-NO.、夷狄、ex-BY SEXUAL、ex-ZIGZO、)。ANCHANGさん(SEX MACHINEGUNS)、マコトさん(怪人二十面奏、ex-ドレミ團)。Yamaさん(Etherial Sin、Rakshasa、Thyende)、KISAKIさん(2026/10/6記事公開予定)・・・など、世代もジャンルもばらばらだ。私の仕事は、その相手に何を聞くかを考え、話を記事の形に組み立てることである。
この連載を始めた理由は、かなり単純だ。私はGargoyleが好きだ。中学生の頃から愛聴し、アルバムも映像作品も全て持っていて、大学生のころはファンクラブにまで入っていた。何を隠そう一度だけドラマーとしてライブのサポートもしたことがある。
KIBAさんが別のバンドの人と話せば、その人のファンがGargoyleを知るきっかけになる。Gargoyleのファンが、対談相手の音楽を初めて聴くこともある。仕事としてだけじゃなく、個人としても音楽シーンのために、メタル界隈やヴィジュアル系界隈のために、本気で貢献したいと考えている。その一方、この対談シリーズだけでシーンを大きく変えられるとは思っていない。
しかし、ミュージシャン同士が少しだけ交差する場所が、メディアの上に一つあってもいいではないか。ひょっとしたら何かしらの波紋を起こせるかもしれない。一緒になって盛り上げてくれるミュージシャン、もしくはメディアが増えてくれるかもしれない。そのくらいの気持ちでいる。
私は以前、サイゾーで取締役をしていた。編集とは別の側から、メディアの数字を見ていた時期が長かった。
対談記事は、とにかく手間がかかる。日程を合わせ、撮影し、文字起こして、構成し、そして原稿を確認してもらう。一本の記事が公開されるまでに、ニュース記事なら何本も出せるだけの時間がかかる。PVだけで比べれば、効率がいいのはたいていニュースのほうだ。
私の肌感では、ミュージシャンの連載など、インタビューを含めて多くの媒体から減っていると感じる。コストだけを見れば当然の流れだ。でもこの連載が残しているのは、その計算に入りにくいものだ。
何十年もバンドを続けてきた人が、続けることについて話す。昔のライブハウスのこと、当時のバンド同士の関係、そして音楽をどうやって届けていたか。そういう話には、ニュースのような賞味期限があまりない。三年後、五年後に読み返せば、その時代の記録として読めるはずだ。
バンドをやっているから気づくことがある
私はいまも現役のドラマーとして、ステージに立っている。ライブハウスに出るし、スタジオにも入るし、時には海外アーティストとも共演するし、フェスにも出るなんてこともある。
ミュージシャンとしての経験が取材でいちばん効くのは、質問を考えるときだ。
TUSKさんの回では、こんなことを聞いた。
「バンドブームの頃、バンド同士はライバルとしてバチバチしていたんですか。お客の取り合いのようなものはあったんでしょうか」
同じ夜に同じステージへ立てば、客席は共有することになる。対バンを経験していれば、その感覚は分かる。
Yamaさんの回では、出演者同士のジャンルが離れすぎたときに、客席の反応が悪くなることはないのかを聞いた。対バンの組み方は、演奏する側から見れば単なるジャンル分けではない。集客にも、ライブの空気にも関わる。客席から見ているだけでは、意識しにくいところだ。
演奏の経験から出てくる質問ばかりでもない。
KISAKIさんの回では、KIBAさんにこう聞いた。
「当時、Gargoyleをヴィジュアル系だと思っていたんですか」
ヴィジュアル系という言葉自体が、後から定着したものだ。これは長く音楽を聴き、シーンの歴史を追ってきた側の知識から出た質問になる。KIBAさんは、自分たちの頃にはヴィジュアル系という言葉そのものがなく、ライブハウスへ出演するとき、ジャンルを書く欄には「ロック」と書いていたと話している。その後の話は、記事を読んでほしい。
KIBAさんの声は、”日本のデスボイスのかなり早い例の一つ”と私は考えている。Yamaさんとの対談前編には、「低い声への壁を壊してくれた」という見出しを付けた。KISAKIさんの回では、ヴィジュアル系のシーンにあった上下関係の厳しさについても聞いている。
演者としての経験、編集者として取材を重ねてきた経験、そして長く音楽を聴いてきた知識。質問は、その三つが重なったところから出てくるのだ。
全員に同じことを聞いている
この連載には、対談相手が変わっても毎回聞く質問がある。
いまの音楽シーンと昔の音楽シーン、その違いをどう感じているか。
一本だけ読めば、一人のミュージシャンの実感である。でも、人数が増えると意味が変わる。ライブハウスの役割、バンドが知られるまでの道筋、音源の価値、そしてファンとの距離など、答えを並べるうちに、それぞれの変化が少しずつ明確な輪郭となっていく。
KISAKIさんは、多いときには年間200本ほどライブをしていたという。インターネットがなかった頃、全国の人に知ってもらうには、自分たちでその土地へ行くしかなかった。いまは、その役割の多くをSNSや配信が担っている。
音楽が人に届く道筋は、確実に変わった。気づけばこの質問は、連載の定点観測になっていた。この先も続けるつもりだ。
聞いているつもりで聞かれている
この連載を続けるうちに、気づいたことがある。人に質問しているつもりで、ときどき自分が質問されている。
バンドを続ける理由を聞けば、自分がバンドを続けている理由を考える。ライブをする意味を聞けば、自分にとってのライブを考える。KIBAさんとYamaさんの回の後編には、「辞める理由がない」という見出しを付けた。
KISAKIさんとの対談で、KIBAさんはこんな話もしていた。
後悔しないように生きるのではなく、いつか後悔してもいいから、今やりたいことをやる。
こういう言葉は、編集者としての私を素通りして、ドラマーとしての私に届く。インタビューする側の席に座りながら、自分の演奏やバンドのことを考え直している。仕事として始めた連載が、自分の音楽にも跳ね返ってきた。始める前には、そこまで考えていなかった。
取材は誰が聞くかで変わる
ヴィヴァルディ・インクでは、WebメディアのコンサルティングやSEO・AIO、サイト制作、コンテンツ制作などを手がけている。音楽の対談と企業の仕事は、まったく別のものに見える。
しかし、取材に限って言えば、起きていることは同じだ。
経営者に話を聞く、技術者に話を聞く、その業界で長く働いてきた人に話を聞くなど対象が異なったとしても、相手が言ったことをそのまま文字にするだけなら、誰が聞いてもそれほど変わらない。
違いが出るのは、その次だ。
一つ目の答えから何を拾い、どんな二つ目の質問をするのか。そこに聞き手の知識と経験が出る。この記事で挙げた質問は、どれもその世界を知っていたから出せたものだ。
記事は、書き始める前にかなりの部分が決まっている。誰に聞くのか。何を聞くのか。答えのどこを掘るのか。そうして出てきた話は、その会社にしか書けない一次情報になる。
Googleも、役に立つコンテンツを見分ける観点の一つとして、独自の情報や調査、分析が含まれているかどうかを挙げている。
自社のオウンドメディアで、専門家インタビューや対談連載を立ち上げたい。取材記事を作っているのに、表面的な話しか出てこない。
ヴィヴァルディ・インクでは、取材・インタビュー記事の制作を、企画と質問設計から取材、構成まで一貫して請け負っています。
聞き手として私自身が取材に入ることもできます。お問い合わせフォームから、ご相談ください。
